脳卒中の後遺症には視覚障害も起こり、視野欠損による日常生活への支障が出ることがあります。
この記事では、そんな視覚障害にはどんな種類や特徴があるのか?特に半盲の見え方や視野障害に対するリハビリテーション、視野障害の方の運転についてご紹介しています。
視野障害の症状を理解し、適切なリハビリが行えるように参考にしてくださいね。
脳梗塞による視野障害とは?
脳梗塞や脳出血など脳の血管障害である脳卒中を起こすと、身体の運動麻痺だけでなく目が見えにくくなる視野障害(視覚障害)も起こります。
特に脳梗塞後の視野障害は自然に回復する場合もありますが、多くの場合は後遺症として残り、日常生活に影響を及ぼすことがありますよ。
ここではそんな脳梗塞後の視野障害について解説していきますね。
視野障害の原因
視野障害の主な原因は、脳梗塞や脳出血といった脳血管障害です。
脳卒中の一種である脳梗塞では、血流が途絶えることで脳の特定部位が損傷します。
その時、視覚に関係する領域を損傷して視覚情報の処理や伝達がうまく行えなくなると視野欠損が発生します。
また脳の他の部分が損傷することで、片麻痺や失語症といった他の障害も併発することがありますよ。
視野障害の種類と特徴
脳の損傷によって起こる視野障害にはいくつかの種類があり、それぞれ特徴があります。
代表的なものには、半盲、視野欠損、複視などがありますよ。
半盲
半盲は視野の半分が見えなくなる状態で、同名半盲や異名半盲に分類されます。
同名半盲には右同名半盲と左同名半盲があり、脳梗塞の影響によって片側の視野が欠損します。
視野欠損
視野欠損は視野の一部が欠けた状態で、視覚情報が欠落するため患者さんの見え方に大きな影響を与えます。
複視
複視は物が二重に見える状態であり、これも視野障害の一種です。
これらの視野障害が日常生活に及ぼす影響は大きく、患者さんは見え方の変化に対応するための工夫やリハビリが必要です。
ちなみに脳卒中後に起こる「半側空間無視」も半分の空間に対して認識できないという症状があり似ていますが、半盲とは別ものなのでアプローチは異なってきますよ。
では次に、視野障害の中の半盲についてさらに詳しくご紹介しますね。
半盲とは何か?
半盲は先ほどもご紹介したように、脳梗塞や脳出血など脳の障害によって視野の半分が見えなくなる状態を指します。
この半盲は、視覚の伝導路のどこが損傷されるかによって様々な視野の障害が起こり、見え方が異なります。
また半盲の状態は患者さんの日常生活や運動機能に大きな影響を及ぼし、リハビリ治療が必要となることが多いため、詳しく解説していきますね。
視覚の伝導路について
半盲の見え方を理解するためには、目に入る光刺激(視覚情報)がどのような経路をたどって視覚中枢へ到達するのかを知る必要があります。
【視覚伝導路と視野障害の参考図】
上の図は脳を上から見た断面図になりますが、視神経の特徴として眼球から出ている視神経は交叉をして(視神経交叉・視交叉)大脳の視覚中枢へ至ります。
半盲の見え方の種類
半盲の見え方は、視覚の伝導路のどの部分で損傷が起こるかによって異なります。
①例えば、一側の眼球や視神経の完全損傷(図のA)では、損傷を受けた側の失明が起こります。
②視交叉の部分の中央部(図のB)に損傷を受けた場合、左右とも耳側の視野が欠けている状態である「両耳側半盲」となります。(異名半盲の1つ)
③視交叉よりも後の右側の視索と呼ばれる部位に損傷を受けた場合(図のC)、右目では耳側の網膜からの神経線維(視野で言うと左側視野)と左目では鼻側の網膜からの神経線維(こちらも左側視野)が障害されるので、両目とも左側半分の視野欠損をきたします。
これを左同名半盲と呼びますよ。
反対に左側の視索に障害を受けた場合は右側の視野欠損が生じ、右同名半盲となります。
視覚の伝導路は少し複雑なので、中枢側の損傷部位の大きさによっても欠損部分も変わりますよ。
もしも欠損部分が広い場合、物にぶつかりやすくなったり、文字を読むのが難しくなったりします。
そこで理学療法士や作業療法士による適切な評価やリハビリが重要になってきますよ。
では次に、半盲などの視覚障害に対してどのようなリハビリテーションを行うのか、リハビリの内容についてもご紹介していきますね。
視野障害に対するリハビリテーション
脳梗塞や脳出血などによる視野欠損や半盲といった視覚障害の改善には、適切なリハビリテーションが不可欠です。
視野欠損や半盲などの視覚障害の場合、その欠けている視野を自覚することができるため患者さん自身が欠損した視野を補うこと(代償動作を獲得すること)が重要です。
ここでは視覚障害に対するリハビリとリハビリを行うにあたっての注意点についてご紹介していきます。
リハビリ方法の具体例
①視覚探索訓練
視覚探索訓練は、周囲の視覚情報を積極的に探すことを促す訓練法です。
例えば左右に物を探す練習を通じて視野が狭くなった部分にも意識を向けるよう指導し、視認範囲を広げる試みを行います。
②コンピューター支援訓練
コンピューター支援訓練では、専用のプログラムを使用して視覚障害のリハビリを行います。
視覚反応速度や視野の広がりをチェックしつつ、ゲーム感覚で視覚の訓練を進めることで患者さんのやる気を高めることができますよ。
これにより退院後も自宅でリハビリを継続することが可能になるため、回復の一助となります。
③日常生活訓練とサポート
視覚障害を持つ方のリハビリ生活には、日常生活訓練が欠かせません。
入院中のリハビリだけでなく、退院後も日常生活の中でリハビリを継続して行われることが一般的です。
具体的には、食事や衣服の着脱、歩行などの日常動作を安全に行えるように練習することが大切です。
また外出時のサポートや家庭内での環境整備も重要であり、患者さんだけでなくその家族に対しても指導が行われます。
リハビリにおける注意点
視覚障害のリハビリは、一朝一夕ではなく持続的に行うことが求められます。
また患者さんの状態に合わせた個別のプランを立てることも重要であり、視覚障害の種類や見え方の違い、片麻痺やその他の身体的障害などに応じて、具体的なリハビリ方法を選定することが求められますよ。
理学療法士や作業療法士などリハビリスタッフや家族と協力し、患者さん自身が前向きに取り組むことができるよう精神面でのケアも忘れずに関わっていきましょう。
半盲と言ってもその人によって見え方が違うので、しっかりとした評価を元にリハビリもアプローチしていきましょう!
では次に、脳梗塞などで視野欠損がある場合に自動車の運転はできるのでしょうか?気になる視覚障害の運転事情について解説しますね。
脳梗塞による視野欠損、運転はどうする?
脳梗塞や脳出血によって視野欠損や半盲が引き起こされると、自動車の運転に対する大きな影響が生じます。
特に視野障害がある場合、車の周囲の状況を正確に把握することが難しくなり、安全運転が困難になりますよね。
そのような視野欠損がある患者さんが運転を再開するためには、まず医師や理学療法士などの評価を受けることが重要です。
専門家によって視野欠損の程度や機能の回復度合いを評価してから、安全に運転が可能かどうかを判断しますよ。
また、視野障害者向けの運転評価テストを受けることもあります。
リハビリの過程で視野障害が改善したとしても、完全に元通りにならないこともあります。
そのため運転を再開する場合でも、安全運転のために適切な訓練を続ける必要がありますよ。
視覚障害に対する訓練として視覚探索訓練やコンピューター支援訓練などを取り入れることで、欠損した視野を補う力を養うことが求められます。
また視野欠損や半盲の症状が軽減した場合でも、安全のために一定期間の運転練習や適応訓練が推奨されますよ。
運転中は特定のポイントに注意を集中させることや、周囲をより注意深く確認する習慣を身につけることが重要です。
さらに運転支援装置の利用なども検討すると良いと思います。
最終的に安全運転が可能かどうかの判断は患者さん自身だけでなく、周囲の意見や専門家の助言も大切です。
適切なリハビリと訓練を通じて、患者さんが安全に運転できる状況を目指してくださいね。
脳梗塞による視野欠損|半盲の見え方とリハビリ方法を解説!のまとめ
この記事では、視覚障害にはどんな種類や特徴があるのか?半盲の見え方や視野障害に対するリハビリテーション、視野障害の方の運転についてご紹介しました。
脳梗塞などの脳卒中による視野欠損や半盲は日常生活に大きな支障をきたすことがありますが、適切なリハビリテーションとサポートを受けることで、視野障害の症状の改善や日常生活の質の向上が期待できます。
視野障害の症状や治療方法を理解し、入院中のリハビリや退院後も継続的なリハビリ生活に取り組むことで、患者さんの生活の質を向上させることができますよ。
また視覚探索訓練やコンピューター支援訓練といったリハビリ方法を用いることで、欠損している視野の代償や機能の回復を目指すことができます。
そして自動車の運転に関しては医療専門家の指導を受けて、安全に運転ができる環境を整えることが重要です。