リハビリテーションと一言でいっても、元々の意味は単なる機能訓練とは違います。
この記事では、本来のリハビリテーションとは何なのか?その語源や意味についてご紹介しています。
またリハビリテーションに関わる分野や専門職についても詳しく解説しているので、今後リハビリ系の仕事に進みたい人は参考にしてみてくださいね。
そもそもリハビリテーションとは何?
怪我をしたり病気になって入院したりすると、その後の体力回復や機能向上のためにリハビリテーションを行うので、「リハビリ=機能訓練」というイメージがあるのではないでしょうか?
もちろんリハビリは機能訓練を意味することもありますが、それだけではありません。
ここでは「リハビリテーション」という言葉の語源や意味などを詳しく解説していきますね。
リハビリの語源と意味
リハビリテーション(Rehabilitation)という英語の直訳は「再適合」や「再復権」となりますが、語源はラテン語に由来します。
リハビリテーションという言葉は、ラテン語の「Re(再び)」と「Habilis(適する)」から成り立っており「再び適する状態にする」や「再び取り戻す」という意味になっていますよ。
また日本語では「全人的復権」として訳され、その人本来の状態を取り戻すことを意味します。
リハビリの歴史
リハビリテーションの歴史は古くからあり簡単にご紹介していくと、古代ギリシャやローマ時代には病気や負傷者の回復を助けるために運動やマッサージが行われていました。
リハビリテーションという概念は中世ヨーロッパで使われ始め、ガリレオ・ガリレイやジャンヌ・ダルクの名誉の復権などもリハビリテーションと呼ばれていたようですよ。
産業革命以降の19世紀頃には、機械化と都市化が進む中で労働者の健康とリハビリテーションの必要性が高まります。
そして第一次世界大戦の時には多くの兵士が負傷し、機能回復と社会復帰が重要な課題となりました。
ここで現代的なリハビリテーションの概念が形成されます。
さらに第二次世界大戦では多くの負傷兵が発生し、リハビリテーション医療の発展が急速に進みました。
この頃アメリカでは、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)の役割が確立されましたよ。
そんな歴史を経て現在のリハビリテーションは身体的な機能回復だけでなく、心理的・社会的な支援も含む総合的なプログラムを提供しています。
また技術の進歩に伴い、工学や情報技術を利用したリハビリテーションも発展していますよ。
リハビリの定義
1968年にWHO(世界保健機関)はリハビリテーションを以下のように定義しています。
リハビリテーションとは、医学的、社会的、教育的、職業的手段を組み合わせ、かつ相互に調整して、訓練あるいは再訓練することによって、障害者の機能的能力を可能な最高レベルに達せしめること
WHO(1968年)
このことからリハビリテーションとは単なる医学的なアプローチだけするのではなく、社会支援や教育機関、職業訓練など様々な面からのアプローチが大切だと認識されていきました。
このように現代のリハビリテーションは身体的、精神的、社会的機能を回復し、個人が再び社会で独立して生活することを目的としており、関わる分野も複数ありますよ。
リハビリテーションに関わる分野
ご紹介したようにリハビリテーションは医療現場だけで提供されるのではなく、様々な場面からアプローチがされています。
現在のリハビリテーションに関わる分野は大きく分けて5つあり、それぞれの特徴について解説していきますね。
1.医学的リハビリテーション
医学的リハビリテーションは医療機関や診療所で理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門スタッフによるリハビリを指し、個人の身体的・心理的機能を回復させることを目的としています。
病気や怪我の後、機能の回復を目指すため一般的にイメージする「リハビリ」の現場ではないでしょうか。
2.職業リハビリテーション
職業リハビリテーションは、障がいや病気を持つ人々が社会で働くために必要なスキルを身につけ、自立した職業生活を送るための支援を提供しています。
具体的には職業相談や職業訓練、就職支援と就労後のフォローアップなど職業に関係するサポートを提供していますよ。
3.教育リハビリテーション
教育リハビリテーションは、障がいを持つ子どもや成人が教育を受けるための支援を行います。
特別支援教育や学習支援を通じて、学習機会の確保と学習能力の向上を目指しますよ。
この教育リハビリテーションは特別支援教育や障がい者教育などと同じ意味を持っています。
4.社会リハビリテーション
社会リハビリテーションは、障がいや病気を持つ人々が社会で自立した生活を送るための支援を行う分野です。
社会リハビリテーションでは、様々な社会的状況の中で自分のニーズを満たし効果的に対処する「社会生活力」を高めることを重視します。
その際に活用する社会資源の中には、地域の相談窓口や公共交通機関などがありますよ。
5.リハビリテーション工学(参加支援工学)
リハビリテーション工学(参加支援工学)は、障害のある人々がより自立した生活を送るための技術と機器を開発・提供する分野です。
具体的には義肢や装具などの身体機能の補完や代行、補助器具、コミュニケーション支援機器などを利用することで生活環境の改善・自立への支援を目指します。
またリハビリテーション工学は従来の補完・代行技術に加えて、住宅改修や交通機関などのバリアフリー化など障がいのある人たちが社会に積極的に参加するための支援技術(参加支援工学)へと進化していますよ。
現代のリハビリテーションとは、病気や障がいを持つ人達を様々な分野から支援し、その人が自分らしく生活できるように支えているんですね。
リハビリテーションに関わる専門職種
リハビリテーションに関わる専門職種は、様々な分野での専門スタッフから成り立っています。
ここでは一般的に医療や介護現場で活躍するリハビリの専門職種についてご紹介しますね。
【リハビリに関わる専門職種一覧】
●理学療法士
●作業療法士
●言語聴覚士
●医師
●看護師
●介護福祉士
●社会福祉士
●義肢装具士
●放射線技師
●管理栄養士
●薬剤師
●歯科衛生士
●柔道整復師や鍼灸師
など……
病院や施設によって関わる専門職は多少違いますが、これだけ多くの専門のスタッフがリハビリに関わっていますよ。
では次に医療や介護現場でリハビリを実際に担当する理学療法士や作業療法士、言語聴覚士についても詳しく解説していきますね。
理学療法士(PT)とは?
まず理学療法士(PT: Physical Therapist)は主に患者様や利用者様の運動機能の回復を支援し、歩行や日常生活動作の改善を目指します。
理学療法士は筋力トレーニングや関節可動域訓練、立ち上がりや歩行訓練などの運動療法や温熱や寒冷療法、電気、超音波などの機器を使用した物理療法などをおこなっていますよ。
私がいた病院では、呼吸リハビリテーションや心臓リハビリテーションなど疾患に特化した認定士の資格を取る人がPTで多かったですね。
<主に理学療法士が働く領域>
- 医療機関(病院やクリニック)
- 介護施設(介護老人保健施設やデイケアセンターなど)
- 小児施設(放課後等デイサービスや小児リハビリテーションセンターなど)
- スポーツ医学(スポーツクラブやスポーツ施設など)
- 健康増進や予防医学(フィットネスクラブや健康センターなど)
PTが多い病院といえば整形外科など思いつきやすいのかな?あとはアスリートのリハビリなどでもPTは有名かもしれませんね!
作業療法士(OT)とは?
私が資格を持っている作業療法士(OT: Occupational Therapist)は、主に患者様や利用者様が日常生活や社会活動に参加できるよう、手工芸や家事動作訓練などを通じて社会復帰を目指します。
作業療法士は理学療法士がやるような運動療法や基本動作訓練もおこないますが、それ以上に日常生活で必要な動作や家事や仕事などに向けた応用動作ができるようにアプローチしていますよ。
その際に、道具を使った作業活動や手工芸などの趣味活動を利用しています。
これも病院や施設によりますが、実はOTってPTとやることが被ることが多いです。
急性期や寝たきりの場合は同じアプローチをしていることもありますね。
<主に作業療法士が働く領域>
- 身体障害領域(一般病院やリハビリテーションセンターなど)
- 精神障害領域(精神科病院や精神保健福祉センター、デイケアなど)
- 老年期障害領域(介護老人保健施設やデイケアセンターなど)
- 発達障害領域(特別支援学校や発達障害支援センターなど)
OTもPTも同じような分野で働きますが、OTの場合は精神科領域でも活躍できる点が違うところでしょうか!
理学療法士(PT)と作業療法士(OT)の違いとは?
理学療法士も作業療法士も同じ病院や施設で働き、似たような治療をおこなっていることもありよく患者様からは「何が違うの?」と質問をされます。
ご紹介したように理学療法士は主に身体的な機能の回復や維持、障がいの予防に焦点を当て、運動療法や物理療法を行います。
一方、作業療法士は日常生活の動作や社会参加の能力を向上させるためのリハビリテーションを提供するという点で専門性を出しています。
理学療法士(PT):基本的な動作能力や運動機能の回復を支援
作業療法士(OT):日常生活の動作や社会参加に必要な応用的な動作能力や社会的適応能力の向上を支援
しかし手術後や治療後すぐに応用動作ができるわけではないので、やはりPTと同じようにOTのリハビリでも基本的な運動機能の回復をサポートしてるんですよね。
ただ整形外科では“手のリハビリ(ハンドセラピィ)”に関してはOTの方が得意だから任せることが多いですよ。
言語聴覚士(ST)とは?
言語聴覚士(ST: Speech Therapist)は言語障害や嚥下障害を持つ患者様や利用者様のコミュニケーション能力や飲み込み機能の改善を支援します。
言語聴覚士は発生や発話などの話すことや聞こえに障がいのある人に対して、また高次脳機能障害から来る失語症などの言語障害に対しコミュニケーション能力の改善や向上を図りますよ。
さらに摂食機能や嚥下機能が低下した人に向け、口腔ケアや間接または直接的な嚥下訓練、医師や管理栄養士などチームを組み栄養のサポートなどをおこないます。
STは病院だと個室の訓練室があったり、嚥下回診など医師と回っていたりしたのでPT やOTとはちょっと違う特別な職種って感じでした。
<主に言語聴覚士が働く領域>
- 医療機関(病院やクリニック)
- 介護施設(介護老人保健施設やデイケアセンターなど)
- 教育機関(特別支援学校や幼稚園、保育園)
STはリハビリスタッフで一番人数が少ないから多忙なことが多いけど、やりがいがあります!
リハビリテーションとはどんな意味?意外と知らない語源を解説!のまとめ
この記事ではリハビリテーションとは何なのか?その語源や意味、定義と歴史についてご紹介し、またリハビリテーションに関わる分野や専門職についても詳しく解説しました。
本来のリハビリテーションは、ラテン語の「Re(再び)」と「Habilis(適する)」から成り立ち「再び適する状態にする」や「再び取り戻す」という意味があります。
そして日本語で訳すと「全人的復権」となり、リハビリテーションという言葉はその人が本来の状態を取り戻すことを意味していましたよ。
そして現代では、病気や怪我などで障がいを持った人たちがその人らしく生活できるようにリハビリテーションでは様々な分野でサポートをしています。
リハビリの専門職としては理学療法士や作業療法士、言語聴覚士があり、それぞれ共通した部分もあったり、独自の専門性を持ったりする部分もあります。
またリハビリテーションは、リハビリの専門職だけでなく医師や看護師、介護士などそれぞれのスタッフが協力して患者様や利用者様の生活を支えていますよ。
患者様や利用者様の運動機能向上や社会復帰という目的は同じですが、それぞれに違ったアプローチ方法があるので興味のある人はぜひリハビリテーションについて確認してみてくださいね!