認知症は多くの高齢者が直面する問題であり、特に介護が初心者の家族にとって接し方は大きな課題となります。
この記事では、認知症を抱える家族への基本的な接し方やポイントとよく見られる症状に対する対応の仕方、また介護をする家族に必要なメンタルケアについて詳しく解説しています。
もしも家族が認知症になったら…、家族だからこそ受け入れるのが難しい時に参考にしてみてくださいね。
認知症について理解しよう!
家族が認知症になってしまった時や初めて認知症の人を介護する時は認知症についての基本的な理解が重要です。
認知症は脳の病気であり、記憶力や判断力、理解力が低下する症状を指します。
代表的なものにアルツハイマー型認知症があり、その他にも血管性認知症やレビー小体型認知症など認知症といっても様々な種類がありますよ。
認知症の原因は多岐にわたりますが、一般的には脳の神経細胞の損傷や死滅が進行することによって引き起こされます。
そのため認知症は、早期の診断と適切な認知症ケアが重要です。
また認知症の進行には個人差があり、進行の速さや症状の現れ方も一人ひとり異なります。
認知症になったからといって、みんなが同じ症状が出るわけではないことも知っておいてくださいね。
認知症の症状と進行について
認知症の症状は段階によって異なります。
初期段階では軽度の記憶の低下や混乱が見られることが多いですよ。
この段階では本人も家族もその変化に気づかないことがあるかもしれません。
しかし認知症の中期になると、日常生活の様々な場面で支障が現れ始め、介護が必要となる場面が増えてきます。
進行するにつれて認知症の症状はさらに多様化し、BPSD(周辺症状)と呼ばれる行動や心理面での症状が出現することがあります。
BPSDには帰宅願望、徘徊、暴力行為、性的言動などが含まれ、看護師やリハビリ、介護職などの専門スタッフでも対応が難しいケースが多いため、適切な知識と接し方が求められますよ。
認知症の進行は本人だけでなく家族への影響も大きいため、家族全体でのサポート体制を整えることが重要です。
では次に、家族が認知症になってしまった時、どのように接するといのか?認知症の方への基本的な接し方についてご紹介しますね。
認知症の家族への接し方のポイントを解説!
認知症になった家族への接し方にはいくつかの基本的なポイントがあります。
接し方の基本を知ることで家族とのコミュニケーションがスムーズになり、認知症の高齢者に安心感を与えることができますよ。
ここでは具体的な接し方のポイントをいくつか挙げて説明しますね。
コミュニケーションの基本姿勢
認知症の方とのコミュニケーションにおいては、相手の立場に立つ姿勢が重要です。
認知症になっている本人自身も、忘れていくことに焦りを感じていたり不安を感じていたりするので相手に安心感を与えるように丁寧に対応することが大切ですよ。
そのため認知症の方とコミュニケーションをとる時には以下のポイントを意識してみましょう。
1.視線を合わせる
2.ゆっくりとした口調で話す
3.感情を穏やかに保つ
4.否定しないで受け入れる
1.視線を合わせる
認知症の方と対話する時は、視線を合わせることが大切です。
視線を合わせることでお互いの気持ちが伝わりやすくなりますし、安心感を与えることができますよ。
特にアルツハイマー型認知症の方に対しては、視線を合わせることで不安を和らげることができます。
2.ゆっくりとした口調で話す
認知症の方との会話では、ゆっくりとした口調で話すことが重要です。
急いで話すと相手が理解できないことが多く、混乱を引き起こす原因になってしまいますよ。
必要であれば同じ内容を繰り返し、分かりやすく短い文章で伝えるよう心がけましょう。
3.感情を穏やかに保つ
認知症の方との接し方では、感情を穏やかに保つことが大切です。
特に相手が家族であると感情的になってしまうこともありますが、感情的に話すと相手は不安や恐怖を感じてしまうことがあります。
穏やかな表情と笑顔で接することが、認知症の方への接し方のポイントの1つです。
4.否定しないで受け入れる
認知症の方に対しては、否定的な言葉を使わないようにすることが重要です。
認知症にある方は否定されると自己肯定感が低下し、不安やストレスを増大させてしまいます。
間違いがあっても否定せず、受け入れる姿勢で対応することが求められますよ。
反対に認知症のある人へやってはいけないNGな接し方もあるので気をつけてくださいね。
では次に、認知症になった家族へやってはいけない接し方についても詳しくご紹介していきますね。
認知症の家族へやってはいけない接し方
認知症のある家族と接していると、その関係性の近さからついやってしまう行動もありますが、ここでは注意したい接し方についてご紹介しますね。
感情的に相手を責める
認知症の症状や行動は本人の意思で制御できるものではないので、認知症の家族に対して感情的に責めることは避けましょう。
家族としては理解してもらえないことに苛立ちを感じることもありますが、感情的に責めることで本人の不安が増し、症状が悪化する可能性があるので冷静に接する努力が必要ですよ。
認知症の対応に慣れていない人が自分の親が認知症になった時、今までの親とのイメージの乖離で感情的なることは当然あります。
そんな時は認知症についてしっかりと理解して、病気として受容していくことも必要ですよ。
急かす
認知症の人は情報処理が遅くなるため動作や反応にも時間がかかりますが、急かすことも禁物です。
急かすと焦りやストレスが増し、さらなる混乱を招くことがありますよ。
例えば「早くしなさい」や「何でできないの」といった言葉は避け、本人のペースに合わせた対応を心がけましょう。
病院や施設のスタッフであれば他人なのでいくらでも待つことができますが、自分の親や家族となるとやっぱり急かしてしまいやすいので気をつけましょう。
ストレスを与える
認知症の高齢者には、大声で怒鳴る、突然の指示を出す、背後から声をかけるなどは、不安や恐怖を引き起こす行動となるので、このようなストレスを与えないようにしましょう。
これらの行動は、行動症状の悪化を引き起こす原因となります。
ストレスを避けるためには穏やかでやさしい口調を使い、本人が安心できる環境を作ることが重要ですよ。
家に閉じ込めたり行動を制限したりする
家族が認知症になると徘徊も心配になりますが、認知症の方を家に閉じ込めたり、行動を過剰に制限したりすることは避けるべきです。
これは本人の自由を奪う行為であり、精神的なストレスを増加させる原因となりますよ。
できる限り本人が自由に過ごせる環境を整え、必要な時にはデイサービスなどの施設を利用することも考えましょう。
家族だけでは問題が解決できない時は、社会のサポートを受けるなど柔軟な対応をしてみてくださいね。
では次に、認知症が進行するとよく見られてくる問題行動についてどのように対応をするといいのか?それぞれの症状に対する対応の仕方をご紹介しますね。
よくある認知症の症状別対応の仕方のポイントを解説!
認知症では「中核症状」と「周辺症状(行動・心理症状)」と呼ばれる症状があります。
●中核症状:脳の神経細胞の障害によって起こる直接的な症状
例:見当識障害、記憶障害、遂行機能障害など
●周辺症状(BPSD):中核症状に環境的な要因や身体的な要因、心理的要因などが合わさった二次的な症状
例:徘徊、不潔行為、抑うつ、不安、妄想、幻覚、暴言や暴力など
このように認知症の方に現れる症状は様々あるのですが、ここではよく見られる行動に対する接し方を解説していきますね。
物を盗られたという妄想に対して
認知症の家族が「物を盗られた」と思い込む被害妄想は非常に困惑させられます。
こうした物盗られ妄想に対しては、否定せずに共感する姿勢が大切ですよ。
「誰かが取ったのかもしれないね。でも、しっかり探してみよう」といった感じで、安心感を与えることがポイントです。
妄想を否定せず、安心感を与えるように対応することが重要です。
対話をしていくことで相手に落ち着いてもらうことができますよ。
記憶低下に対して
食事をしたことを忘れてしまう場合
食事をしたことを忘れてしまい、同じ食事を何度も求めることがあります。
その際は「少し休んでから、一緒にお茶でも飲もう」と提案するなど、気を紛らわす方法が有効です。
また日常生活のリズムを安定させ、食事の時間をルーチンとして取り入れることでこの問題を少しでも軽減できますよ。
人の名前が分からない場合
名前が分からなくなる記憶の低下には無理に思い出させようとするのではなく、自然に名前を伝える方法があります。
「おばあちゃん、これはあなたの孫の○○ですよ」といった感じで、間を取りながら話しかけることが大切ですよ。
このように穏やかに話しかけることで、認知症の高齢者の不安を軽減することができます。
今日の日付が分からない場合
認知症の方が今日の日付や曜日を忘れることはよくあります。
その際はカレンダーを見せながら優しく教えてあげると良いですよ。
また日常会話の中で「今日は○日だね」などと説明することで記憶をサポートできます。
記憶が低下していることに対して大事なのは、繰り返し伝える際にイラ立たないことですね。
徘徊に対して
徘徊は認知症の一般的な症状で、認知症の方が目的もなく歩き回る行動です。
家や施設の中で迷子になったり外に出て危険な状況に陥ったりすることがあるので、家庭や施設では安心感を与える環境整備が重要ですよ。
そのため必要に応じて、デイサービスを利用するのも1つの手です。
また徘徊時には安心できる安全な居場所に誘導し「どこかに行きたいの?」と話を聞く姿勢を持つことで、不安を軽減させることができますよ。
もしも家から出てしまったら…というリスクがある場合はGPS端末を持ってもらうことも1つですよ。
攻撃的や暴力的になる行動に対して
時には認知症のある高齢者が攻撃的になったり暴力的になったりすることもあります。
こういった場合はその原因を理解し、冷静に対処することが必要ですよ。
興奮している相手と距離を保ちつつ、低く穏やかな声で話しかけ、不安を和らげることをお勧めします。
必要な場合には専門の介護職や施設の助けを借りることも検討しましょう。
本人と家族と毎日一緒にいる環境がお互いストレスになる場合は、短期間の施設入所なども取り入れていきましょう。
失禁や便をいじる問題行動に対して
失禁や便をいじるといった問題行動に対しては、認知症であっても高齢者の尊厳を傷つけないように対応することが重要です。
排泄回数を増やすなどの予防策や清潔を保つことを心がけ、トラブルの原因を探るための観察を続けることが求められますよ。
また訪問サービスやデイサービスなどの施設との連携も検討すると良いでしょう。
家で認知症の家族の介護をすることには限界もあります。
介護をする側の家族のためにも施設やサービスの利用も検討してくださいね。
では次に、認知症の家族を介護する側の家族のメンタルケアについても解説していきますね。
介護をする家族のメンタルケアも忘れずに!
家族が認知症になった時、認知症の方の対応に慣れていない場合は家族も混乱したり不安になったり、ストレスも溜まります。
特に身体機能には問題がないのに、今までの両親からは考えられないおかしな言動が見られると家族側の心理的なショックも大きいですよね。
ここではそんな介護をする側の家族のメンタルケアについて解説していきますね。
そもそも家族が認知症になったことを受け入れるのに時間がかかる
自分の両親など家族が認知症になったことを受け入れるのに時間がかかることがあります。
アルツハイマー型認知症や他の類型にかかわらず、家族が変わりゆく姿を受け入れることは感情的に大変辛いことですよね。
家族が認知症になったことを受け入れる過程は心理的に非常に困難で、一般的に以下の4つの段階に分かると言われていますよ。
1.否認の時期
最初の段階では家族は認知症の診断を受け入れたくないという感情に直面します。
これまでの本人のしっかりとしたイメージが強く認知症の症状を認めず、現実を否定することが多いですよ。
この段階では認知症の症状を「年のせい」として片付けてしまうことがよくあります。
2.混乱と抵抗の時期
次の段階では家族は認知症の現実に混乱し、抵抗を感じるようになります。
認知症の介護に対する不安やストレスが増し適切な対応が難しく感じられることもあり、この段階では家族間でのコミュニケーションも摩擦が生じやすくなりますよ。
3.試行と調整の時期
この段階では家族は認知症の症状に対処するために、様々な方法を試行錯誤します。
認知症の介護方法や対応策を学びながら、少しずつ適応していきますよ。
ただし介護者自身の心理的な負担が軽減される一方で、介護に伴う疲労感も増すことがあります。
4.受容の時期
最後の段階では家族は認知症を受け入れ、現実を理解し適応します。
この段階に達することで、家族は認知症の症状に対して冷静かつ適切に対処できるようになりますよ。
また介護を通じて人間的に成長し、家族全体で支え合うことができるようになります。
このように認知症を受け入れる過程は段階的であり、時間を要します。
介護者側の家族は適切なサポートを受けながら少しずつ理解を深め、現実に向き合うことが重要ですよ。
ストレス管理を行いましょう
認知症の家族を介護する家族自身もメンタルケアを忘れないようにしましょう。
高齢者の認知症ケアは時間やエネルギーがかかり、介護する人も疲労やストレスを感じることが多いです。
適切なストレス管理を行うことで、自分自身の健康を保ちつつ、より良い介護ができますよ。
介護者自身も適度な休息や趣味の時間を確保することはもちろん、専門家に話を聞く機会を設けたり、デイサービスや短期入所などを利用したりすることも有効です。
必要な時はサポートを求めましょう
家族だけで認知症の高齢者の介護を全て担うのは非常に難しいです。
必要な時は友人や親戚だけでなく、介護施設や専門のスタッフになど周囲のサポートを求めてください。
サポートを受けると心に余裕を持つことができたり、より効果的な認知症対応のポイントを学ぶことができ不安を軽減することができますよ。
お互いのために介護者自身のメンタルケアもしっかりと行って、よりよい関係が継続できるようにしていきましょうね。
認知症の家族への接し方のポイント|介護初心者向け安心ガイド!まとめ
この記事では、認知症とはどんな病気なのか、また認知症の家族への基本的な接し方のポイントとよく見られる症状への対応の仕方、介護をする家族に必要なメンタルケアについてご紹介しました。
認知症の家族への接し方としては、コミュニケーションの基本姿勢を大切にし、相手の感情に寄り添う姿勢が求められます。
特に認知症の高齢者が安心して過ごせるように、穏やかで尊厳ある対応を心がけましょう。
また認知症の症状は多様であり、進行も個人差があります。
そのため介護をする家族は、状況に応じた柔軟な対応を身につけることが不可欠です。
認知症の方が不安を感じることないように笑顔で接することで、相手に安心感を与えるだけでなくコミュニケーションの円滑化にも役立ちますよ。
さらに認知症の症状の進行を理解して適切な対応を行うことで、問題行動の原因を把握しやすくなります。
介護をする家族自身のメンタルケアも重要で、必要な時にはデイサービスや介護施設のサポートを利用することも視野に入れてくださいね。
認知症の接し方のポイントを実践し、家族全員が笑顔で過ごせるような環境作りを目指しましょう。